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舌下免疫療法

舌下免疫療法とは(スギ花粉症、ダニアレルギー性鼻炎)

アレルギー症状の原因となるアレルゲンを含んだ内服薬を舌の下に連日投与を行うことで、時間をかけて徐々に体にアレルゲンへの耐性を作り、症状の改善が期待できる治療法です。このように体にアレルゲンを慣れさせる治療は免疫療法と呼ばれ、以前は皮下注射による皮下免疫療法が一般的でしたが、現在ではより痛みや副作用などのリスクが少なく、通院頻度も少なくて済む舌下免疫療法が主流となっています。現在、スギ花粉症とダニアレルギー性鼻炎に対する舌下免疫療法が保険適用され、5歳以上のお子さんに行えるようになりました。近年では、アレルギー性鼻炎や花粉症の発症が早くなっており、2-3歳でも症状が出る方が増えています。このような場合、成長期の症状や生活の質の改善が期待されるため、早期に開始することが期待されます。ただし、舌の下に薬を1分間保つことが必要ですので、5歳以上でもそれが難しい場合は、時期を改める必要があります。なお当院では、お子さんと一緒であればご両親への舌下免疫療法を行うことも可能です。お気軽にご相談ください。


以下に該当する方は舌下免疫療法を行う上で注意が必要です

該当する方はまず、医師にご相談ください。

  • 気管支喘息をお持ちの方
  • 65歳以上の高齢者
  • 過去にアレルゲンを使用した検査や治療にて強いアレルギー反応を起こした経験がある方
  • 妊娠中の方
  • 授乳されている方
  • 抜歯など歯科治療中の方
  • 口内に傷や炎症をお持ちの方
  • 重度の心疾患をお持ちの方
  • 全身にステロイド投与を行っている方
  • 肺疾患をお持ちの方
  • 高血圧症の方
  • 非選択的β遮断薬、三環系うつ薬などのお薬を使用中の方

など


舌下免疫療法を開始する際の注意点

舌下免疫療法の通院は、治療開始時は2週間ごと、その後は4週間に1回です。治療は3年以上継続していただく必要があります。また、治療を行っても効果がみられない方もおり、アナフィラキシーなどの重篤な副反応が引き起こされる可能性もあります。薬は、舌の下に入れるとすぐに溶けますが、飲み込まず1分程度保持してから飲み込みます。服用後5分間はうがいや飲食は避けてください。この方法を体調不良などがなければ毎日継続できることも治療を行う条件となります。なお、服用前、服用後2時間は激しい運動、アルコール摂取、入浴などは避けてください。


舌下免疫療法の流れ

以下は、舌下免疫療法の例としてシダキュアという薬を用いたスギ花粉症の治療の流れになります。ただし、ダニアレルギー性鼻炎の場合も基本的には同様です。

1診察

まずは、治療を希望される方が、舌下免疫療法を行う条件を満たしているか確認します。必要な場合には血液検査を行うことがあります。治療が可能と判断された場合、治療内容について説明し、実施することが決定したら、初回の薬剤投与を行うための診察日時を決定します(初回投与は院内で行います)。

2舌下免疫療法の開始

同意書など、治療を開始するにあたって各種手続きを行います。初回投与は院内で行います。適切に服用できたかの確認とともに、投与後30分は院内で待機していただき、問題となる副作用がないか確認します。したがって、初回投与時は、受付から会計まで1時間〜1時間半程度かかることをご了承ください。

3増量期

薬は1日1回服用してください。舌の下に薬を置き、1~2分経過したら飲み込みます。なお、投与後5分間は、うがいや飲食は控えてください。最初の14日間は増量期といって、開始1週間はアレルゲン含有量が少ない薬を投与し、2週目(8日目)からはアレルゲン含有量を増やした薬を投与します。

4維持期

3週目(15日目)以降は、2週目と同じ薬を毎日投与します。投与の方法は変わりません。引き続き、投与後5分間はうがいや飲食は控えてください。


舌下免疫療法の副作用

この治療は、投与によって症状を軽くする薬ではなく、症状の原因となるアレルゲンを含んだ薬です。したがって、体が慣れてくるまでは、アレルギー症状が出ることがあります。一方、一時的な軽い症状として、口内炎、舌下や口内の腫れ、のどや耳のかゆみ、頭痛といったものが報告されています。一方、現時点では、アナフィラキシーなどの重篤な副作用の事例の報告はありませんが、注意は必要です。ただし、軽い症状であっても、症状が改善しない場合は医療機関を受診するようにしてください。


舌下免疫療法のよくある質問

舌下免疫療法は何歳から可能ですか?

5歳からです。

通院頻度はどのくらいですか?

院内での初回投与後、順調であれば、最初2回は2週に1回、その後は4週に1回の通院が必要になります。

舌下免疫療法はどのくらいの期間、継続する必要がありますか?

副作用で継続できないといった理由がなければ、少なくとも3年間は治療を継続する必要があります。その時点で有効性がみられなければ終了しますが、効果がみられていれば4-5年は治療を継続します。

治療を行えない人はいますか?

現在妊娠中の方は治療の開始はできません。ただ、近い将来妊娠を考えている方は、治療開始後に維持期に至って落ち着いている方でしたら、妊娠は可能です。また、重症な喘息や心疾患をお持ちの方は治療を行えません。その他、ステロイドの全身投与(内服や注射)、抗がん剤などの投与を受けている方は治療できません。また、高血圧などでβ遮断薬(βブロッカー)を使用している場合は、重篤な副作用がでた場合の治療の妨げになるため、β遮断薬以外の薬剤に変更した後であれば治療開始が可能です。その他、医師の診察の結果、治療の導入が難しい場合もありますので、ご了承ください。

スギ花粉やダニアレルギーの同時治療は可能ですか?

可能ですが、それぞれ異なる薬を使用しますので、開始時期をずらす必要があります。例えば、最初にスギ花粉の舌下免疫療法を開始した場合、3か月程度経過した後にダニアレルギー性鼻炎の舌下免疫療法を開始する、などです。

治療はいつでも開始できますか?

ダニアレルギー性鼻炎の舌下免疫療法は、いつでも開始できます。一方、スギ花粉症の舌下免疫療法は1〜5月の飛散シーズンには開始できません。飛散していない6月から、遅くとも10月頃までに治療を開始することが理想的です。ただし、開始後に飛散シーズンになっても、症状に問題がなければ、舌下免疫療法は継続できます。

舌下免疫療法はすぐに効果を実感できますか?

長期間継続することで、アレルゲンを少しずつ体に慣らしていく治療のため、投与開始後すぐに症状が改善するわけではありません。ただ、開始数ヶ月程度で効果を実感される方が増え、数年で8-9割の方が効果を実感しているようです。一方で、効果がみられないこともあります。効果がみられる場合には3-5年治療継続すれば、その後中止しても、長期に有効性が維持されることが報告されています。

妊娠中や妊活中の治療開始は可能ですか?

妊娠中や妊娠の可能性がある方は、基本は治療を開始できません。ただし、すでに舌下免疫療法の治療を開始し、維持期に入っている場合には妊娠は可能です。

舌下免疫療法でダニアレルギーや花粉症は必ず治りますか?

症状の寛解が期待できる治療法ですが、中には効果が乏しいこともあります。スギ花粉症の場合、30%が長期寛解、30%が著明改善、20%が部分的改善で、20%は効果がみられなかったという報告があります。

舌下免疫療法中は他の薬は使用できませんか?

舌下免疫療法中でも、アレルギー症状を軽減させる薬の内服は可能です。ただ、ステロイド内服薬は使用できません。ただし、点眼薬や点鼻薬によるステロイドの局所投与であれば使用は問題ありません。

舌下免疫療法は生涯の継続が必要ですか?

3~5年間治療を継続した場合、治療中止後もしばらくは効果は持続することが報告されています。まず3年は治療を継続し、効果を実感できた場合、計4~5年は治療を継続することを推奨します。ただし、治療終了後、再びアレルギー症状が悪化してくる場合には、再度1~2年の治療を追加することで効果が得られてくることが報告されています。

舌下免疫療法にかかる費用はどのくらいですか?

小児の医療証がある場合は、その範囲内の負担となります。それ以上では通常の3割負担の場合、月々の薬代の自己負担額はスギ花粉症で約1500円/月、ダニアレルギーで約2800円/月となります。これ以外に診察料がかかります。