小児喘息とは
慢性的な呼吸の病気です。日本では小児の約5%がかかっていると言われており、比較的よくみられる疾患です。アレルギーや感染症、運動や気候などが影響することで、気道が炎症を起こし、狭くなることで発作的な咳や呼吸困難を引き起こします。また夜間や早朝に症状が悪化する傾向があります。治療には、吸入ステロイド薬などを使用するのが一般的で、適切な管理により、発作を予防し症状を抑えることが可能です。成長とともに改善することもありますが、コントロールが悪いと成人まで持ち越すこともあるので、早期の診断と治療が大切です。
小児の喘息と大人の喘息は違う?
小児喘息と成人喘息の主な違いは誘因と予後です。小児喘息の大半はアレルギーが原因で起こりますが、成人喘息はより複雑で、アレルギー以外にもストレスや自律神経の乱れにより起こることもあります。また、小児喘息は成長とともに症状が軽くなったり、治るケースもある一方で、成人喘息では慢性的に続くことが多いです。治療方針もそれぞれの年齢や症状に応じて異なります。
小児喘息の原因
小児喘息では主にアレルギーと環境要因が影響します。ダニ・ホコリや花粉、ペットの毛、カビなどはアレルギーの代表的な原因です。また風邪などのウィルス感染症も喘息発作を誘発することがあります。その他、運動や気温の寒暖差、煙や大気汚染、高学年になってくるとストレスが影響することもあります。また、家族に喘息やアレルギー疾患を持つ方がいる場合、お子さんの発症リスクが高くなると言われています。このようなきっかけにより、細い気管支壁の筋肉が収縮したり、痰が分泌されたりすることで、気管支の内腔が狭くなり、発作性の咳が出たり息苦しくなったりします。
小児喘息の原因はストレス?
喘息の誘因の一つにストレスは挙げられます。ただし、ストレスが誘因になるのは成人の方が多く、小児ではアレルギーや感冒などが誘因となることが多いです。ただし、ストレスがかかるとより発作を起こしやすい状況になるため、慢性的なストレスがかかっていることが考えられる場合には、喘息治療と平行して心理的アプローチも行っていくことが大切です。
小児喘息は親のせい?
喘息の発症には、ある程度遺伝的要因は影響しています。両親のどちらかがアレルギー体質がある場合には、そのお子さんに受け継がれる可能性は高まります。ただし、それ以上に環境の要因なども喘息発症に影響するため、生活環境を整えることが大切です。
小児喘息の症状
- 咳や痰がでる
- 呼吸をしたときに「ヒューヒュー」「ゼイゼイ」音がする
- 呼吸時に胸がべこべこ凹む
- 咳は夜間や明け方に多く出る
- 息苦しい
- ひどくなると横になるのを嫌がる
など
小児喘息の検査・診断
問診や聴診から喘息の疑いをつけていくことが診断の入り口です。特に小さいお子さんのでは呼吸機能検査ができないため、問診と聴診が重要になります。また、小さいお子さんでは、喘息ではなくとも感染症により喘息様の症状が出ることがありますが、そのような状態が繰り返し起こる場合には喘息素因がある可能性が考えられます。ただし、「ぜいぜい」を起こすのは喘息以外にも胃食道逆流症や気管支狭窄症といった他の病気もあるため、そのような病気との鑑別も必要です。具体的な検査としては、必要に応じてアレルギー検査を施行しますが、学童以上では気道炎症の程度を判断できる呼気中の一酸化窒素濃度を測定する検査があり、当院でも行えます。学童以上のお子さんでより詳しい呼吸機能検査が必要な場合には他院をご紹介いたします。
小児喘息の治療(治し方)
喘息の治療では、薬物療法と環境整備が大切です。薬をたくさん使用していても、発作を起こしやすい環境が改善されなければ薬をやめることはできません。喘息の薬は大きく以下の二種類に分けられます。
① 起きている発作を止める薬
② 発作が起きないように予防する薬
喘息の発作が起きた時は①の薬を使いますが、発作が落ち着いた後、何も治療をしないでいるとまた次の発作を起こしてしまいます。②の薬を毎日使用することで喘息の発作を予防し、喘息自体を治していきます。
① の薬
- 短時間作用型吸入β2刺激薬:ベネトリン、メプチン、サルタノールなど
- 経口β2刺激薬:メプチン、ホクナリン、ベロテックなど
- 全身性ステロイド内服薬
② の薬
- 吸入ステロイド:フルタイド、キュバール、パルミコート、オルベスコ、アドエア、フルティフォームなど
- ロイコトリエン受容体拮抗薬:シングレア、キプレス、オノンなど
- 生物学的製剤:ゾレア、ヌーカラ、デュピクセントなど
小児喘息は何歳まで続く?
小児喘息のほとんどが6歳前後までに発症すると言われています。また、小学校低学年では10人に1人程度が喘息と診断されますが、年齢が上がるにつれて改善します。
小児喘息は治る?
小児喘息は適切な治療をすることで改善したり、完全に治ったりすることが期待できる疾患です。ただし、小学生ごろまでにきちんと治療を受けないと、将来的に呼吸機能が低下するというデータも出ています。診断を受けたらしっかりと治療を続けていくことが大切です。
小児喘息は幼稚園・保育園・学校を休んだ方がいい?
発作が出て苦しい時はお休みをして安静に過ごしてください。発作が起きていないときは普段通りの生活をして構いません。また、運動に関しても発作がなければ他のお子さんと同じように参加することができ、その上で運動時に咳が出たりするのかを確認していただければ大丈夫です。
小児喘息を放置するとどうなる?
小児喘息は適切な治療をすれば治すことができる病気です。一方、治療を行わないと成人まで移行することがあります。小児期に適切な治療を受けていないと、将来肺機能が低下することが分かっており、早期の診断と早期の治療介入が大切です。