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夜尿症(おねしょ外来)

おねしょ(夜尿症)について

お漏らしやおねしょは、年齢とともに脳神経や泌尿器の機能が成熟するにしたがって自然になくなっていくものです。しかし、①5歳以上で、②月1回以上の夜間睡眠中の尿失禁が、③3か月以上続く場合、「夜尿症」と定義されます。夜尿症は無治療でも年15%くらいの頻度で改善していくことが報告されていますが、改善する年齢には個人差が大きいことや、お子さんの自尊心への影響、学校での宿泊機会などを考慮すると、早めの医療機関への相談が勧められます。まずは状況をお聞きした上で、生活上の注意点や対応について相談致します。ただし、身体の病気があって発症することもありますので、必要な場合には専門医療機関に紹介させて頂くことがあります。


おねしょ(夜尿症)を
治すには

生活習慣の注意点

夜尿症の改善に重要なことは、まず、生活における注意点を知ることが大切です。当然、良好な心身の状態を保つため、早寝早起きと十分な睡眠時間の確保、安定した生活リズム、バランスのよい食事内容、日中の健康的な過ごし方などに対する気配りは必要です。その上で、夕食は塩分を控え、入眠の2時間前までに済ませ、夕食後の水分摂取は多くてもコップ1杯以内とし、就床前にしっかりと排尿することが大切です。これによって夜間の尿量をかなり抑えることができます。また、睡眠中に無理に起こしてトイレに行かせることはやってはいけません。本人の治療への動機づけも大切です。本人が夜尿に全く関心がないのに、両親からあれこれ制限されたり指示されたり、失敗をお子さんのせいにして叱ってしまったりしていては、治療はうまく行きません。本人とゆっくりと話し合った上で、治療の動機や目標を一緒に確認した上で始めることが大切です。

チェックするポイント

膀胱に溜められる尿量

膀胱に溜められるおしっこの量(機能的膀胱容量)には個人差があります。溜められる量が少なければ当然、夜間に作られる尿の量もそれを超えてしまう可能性が高くなり、結果として夜尿症となってしまう可能性があります。機能的膀胱容量は、排尿日記を付けたり、日中にできるだけ我慢した状態から出る尿量を測ることで計算できます。夜尿症で受診した場合には、まずこの量を把握していくことが大切です。これが年齢から予測される量よりも十分に少ないことで夜尿症の原因となっている場合には、「膀胱型」夜尿症と呼ばれます。

夜間睡眠中の尿量

睡眠中は尿の量を抑えるため、抗利尿ホルモンと呼ばれる成分が脳から分泌されます。これによって昼間にでる尿よりも夜間の尿が濃くなり、尿の量も少なくなります。このホルモンの分泌機能が未熟で、尿を濃くする(濃縮)機能が弱い場合には、夜間睡眠中の尿量が増加するため、夜尿症となってしまう可能性がでてきます。これを「多尿型」夜尿症と呼んでいます。この濃縮能を確認するには、夜間睡眠中の尿量(夜間のオムツに溜まった尿量、あるいは漏れた尿量+朝一番の尿量)やその濃さ、特に起床後、最初の尿の濃さ(比重や浸透圧と呼ばれます)を測ります。

昼間のお漏らし(昼間尿失禁)

夜尿では、昼間、起きているときのお漏らしを伴うこともあります。これも成長とともに落ち着いてくることは多いですが、体の病気が隠れている可能性もあり、夜尿の治療を考える上で大切です。


夜尿症の治療

頻度も少なく、夜尿の量も少ないなどの軽い場合や、状況から緊急性が乏しい場合などでは、生活での注意点の改善や、夜尿に対する捉え方を正しく勉強しながら、しばらく経過をみても問題ありません。一方、連日など頻度が高く量が多いなど重い場合や、時間が経過しても改善しない場合には、薬物療法やアラーム療法などの治療を検討します。このため、まずは夜尿の実態をしっかりと把握することが大切ですので、日誌をつけていくことも大切です。

薬物療法

抗利尿ホルモン薬(内服薬・点鼻薬)

前述した抗利尿ホルモンの薬です。このホルモンの作用によって夜間の尿が濃縮され、尿量が減ることで効果がでます。水なしで口腔内で唾液で崩壊して服用する錠剤と点鼻薬の2種類がありますが、通常は前者を使用します。この薬を使用する場合、水中毒の危険がありますので、就寝前2時間の水分は多くてもコップ1杯(200ml)以内にしましょう。

抗コリン薬(内服薬・テープ薬)

膀胱の緊張を和らげ、膀胱の収縮を抑制することで尿を溜めやすくする薬です。内服薬と貼るタイプのテープの薬があります。ただし、夜尿症に漫然と使用する薬ではありません。副作用もあるため、医師が必要と判断した場合に使用します。

三環系抗うつ薬(内服薬)

上記の抗コリン薬と類似の作用がありますが、その他、さまざまな作用機序で有効な場合があります。通常の治療で改善がみられず、医師が必要と判断した場合に補助的に使うことがあります。

アラーム療法

アラーム療法とは、パンツに水分を感知する小さなセンサーをつけることで、おねしょが出たことをお子さん自身にアラーム音で認識させる治療法です。これによって、睡眠中の尿保持力の増加や夜間尿量の減少といった効果が期待できるようになります。重要な点は、この治療は夜中に起こしてトイレに行かせるためのものではなく、おねしょをする時間帯が徐々に朝方にずれていき、最終的に中途覚醒せず朝まで眠れるようになることを目標とした行動療法であることです。有効率は70%程度と報告され、再発率が低く副作用が少ないというメリットがあります。一方で、この治療はアラーム音でお子さんのみならず、ご家族の睡眠も障害されることがあるなど、負担もあり、数ヶ月以上焦らず継続することが重要ですので、本人の治療の意義の理解やモチベーションとともに、家族の理解とサポ-トが必要です。


日常生活指導について

保護者の方に
守っていただくこと

焦らず、起こさないようにしましょう

夜尿症は体質的要素が大きく、治療をしたからすぐに根本的に治るわけではありません。前述した通り、身体の機能発達をじっくりと待つ必要があります。また、おねしょをしたお子さんを睡眠中に起こしてしまうと、睡眠中に分泌される抗利尿ホルモンの低下を招き、改善が遅れることがあります。ただし、アラーム療法(前述)の場合は例外です。

怒ったり叱ったりしないようにしましょう

お子さんがおねしょをしたとしても、決して怒ったり叱ったりしてはいけません。当然、おねしょをするのは、お子さん自身が意図的に悪気があってやってることではありませんし、むしろ、お子さん自身にとっても困っていることです。叱るのではなく、そのつらい気持ちを共感的に理解し、失敗を恐れて萎縮しないよう、ともに改善を目標に歩んでいく仲間になってあげてください。

夕食は早めに済ませましょう

夕食は可能であれば就寝時間の3時間前、少なくとも2時間前までには済ませるようにしましょう。また、夕食時の塩分が多いと、夜間に塩分が尿中に排泄され尿量が増えてしまいます。夕食の塩分を控えめにするとよいでしょう。

便秘にも注意しましょう

夜尿症のお子さんでは、便秘を伴っていることが多いです。特に昼間の尿失禁がある場合は大切です。便秘があると、お腹の中で貯まった便が膀胱を圧迫し、膀胱容量が減って夜尿を起こしやすくなります。排便が2-3日ないことが多い場合や、毎日出ていても便の中にコロコロした硬い便が含まれている場合、よく食後などに腹痛がある、などの症状には注意しましょう。夜尿症のお子さんで便秘がある場合、便秘の治療を優先することがあります。

お子様本人への指導

日中は水分をたっぷり摂りましょう

夕食後から寝る前の水分は控えることを説明しましたが、日中にはしっかり水分を摂るよう心がけましょう。水分は体調や日中の活動を支え、便秘を防ぎ、自律神経機能を整えるのに大切です。ただし、お子さんがつらいのに、無理に多量の水分を強要することはやめましょう。

寝る前に排尿

夕食などで摂取した水分は、2時間程で尿になって出ていきます。したがって、就寝前には、必ずトイレに行って、しっかりと排尿する習慣をつけましょう。

排尿日誌をつけてみましょう

排尿日誌をつけることで、夜尿の頻度、夜間の尿量、日中のがまんした時の尿量や排尿状況などを正しく把握することができるようになります。これによって、治療の選択や効果について判断することができるようになります。また、できるだけお子さん本人がつけることで、ご本人が夜尿に向き合うようになり、治療のモチベーションが上がることが多いです。